ピアノの楽譜で、五線の外に短い線が何本も付いた音符を見ると、急に読めなくなることがあります。五線の中なら読めるのに、加線が出た瞬間に手が止まるという悩みは珍しくありません。
加線の音符は、特別な読み方をするわけではなく、五線がそのまま上下に続いているだけです。最初から全部を暗記するより、中央のドなどの基準音を覚え、近い音から数える方法がわかりやすいです。この記事では、ト音記号・ヘ音記号それぞれの加線の読み方、覚え方、毎日の練習方法まで順番に整理します。
加線の音符が読めないときは「基準音から数える」とわかりやすい

加線とは、五線だけでは書けない高い音や低い音を表すために追加する短い線です。見た目は五線から離れていますが、音の並び方は変わりません。線と間が交互に続き、隣へ移るごとにド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シと1音ずつ進みます。
まず覚えたいのは中央のド
ピアノの大譜表では、上段のト音記号と下段のヘ音記号の間に「中央のド」があります。ト音記号では五線の下に加線を1本引いた位置、ヘ音記号では五線の上に加線を1本引いた位置です。書かれる場所は違って見えますが、どちらも鍵盤上では同じ中央のドを表します。
この中央のドを確実に読めるようにすると、ト音記号の下側とヘ音記号の上側で迷いにくくなります。加線を見るたびに五線の端から長く数えるのではなく、近くにある中央のドを基準にできるからです。
たとえば、ト音記号の中央のドのすぐ下の間はシ、その下の加線はラです。ヘ音記号では中央のドのすぐ上の間がレ、その上の加線がミです。このように、基準音から1音ずつたどれば答えに着けます。
加線でも「線→間→線」の順番は同じ
加線が苦手な人は、線の本数だけを見て「1本目だから何の音」「2本目だから何の音」と考えがちです。しかし、実際には線の上の音だけでなく、加線と加線の間にも音があります。そのため、本数だけを頼りにすると1音ずれてしまうことがあります。
見る順番は単純です。五線の端から外側へ向かって「間、線、間、線」と進み、そのたびに音名も1つずつ進めます。音符の玉が短い線に重なっているのか、線と線の間にあるのかを最初に確認すると、数え間違いを減らせます。
最初はゆっくり数えて構いません。正確に読めることを優先し、何度も出てくる音だけ少しずつ見た瞬間に答えられるようにしていく方が、無理な丸暗記より安定しやすいです。
よく出る音だけ先に覚えると負担が減る
ピアノで使う加線の音を最初から端まで全部暗記しようとすると、覚える数が一気に増えます。そこで、中央のドに加えて、1オクターブ上や下のドなど、形のわかりやすい音を目印にすると便利です。
「この音は高いド」「この音は中央のド」と数個の目印を持っておけば、未知の音でも一番近い目印から数えられます。練習を続けるうちに、最初は数えていた音も自然に形として覚えていきます。
ト音記号の加線はどの音?上と下を整理

ト音記号は、ピアノでは主に右手の高い音域で使われます。ただし曲によっては中央のドより下の音も出るため、五線の上側だけでなく下側の加線も読めるようにしておくと安心です。
ト音記号の上側は「ファの次がソ、その次がラ」
ト音記号の一番上の線、第5線はファです。その上の間がソ、さらに上の第1加線に乗る音がラです。その次の間がシ、第2加線に乗る音がドになります。つまり、五線の中から外へそのまま音階が続いています。
| 位置 | 音名 | 読み方の考え方 |
|---|---|---|
| 第5線 | ファ | 五線内の一番上の線 |
| 上第1間 | ソ | ファの1音上 |
| 上第1線 | ラ | 加線1本目に乗る音 |
| 上第2間 | シ | ラの1音上 |
| 上第2線 | ド | 加線2本目に乗る音 |
| 上第3間 | レ | ドの1音上 |
| 上第3線 | ミ | 加線3本目に乗る音 |
特に上第2線のドは目印にしやすい音です。第2加線のドがすぐ見つかるようになると、その近くのシ・レ・ラ・ミも短い距離で判断できます。
ト音記号の下側は中央のドを基準にする
ト音記号の一番下の線、第1線はミです。そのすぐ下の間がレ、下第1線に乗る音が中央のドです。ピアノを始めたばかりの教材でもよく登場するため、ここは優先して覚えておきたい位置です。
| 位置 | 音名 | 覚え方 |
|---|---|---|
| 第1線 | ミ | 五線内の一番下の線 |
| 下第1間 | レ | ミの1音下 |
| 下第1線 | ド | 中央のド |
| 下第2間 | シ | 中央のドの1音下 |
| 下第2線 | ラ | 加線2本目に乗る音 |
| 下第3間 | ソ | ラの1音下 |
| 下第3線 | ファ | 加線3本目に乗る音 |
低い方へ進むときは、ド・シ・ラ・ソ・ファと逆向きに数えます。上下を混同しやすい場合は、紙の上だけで覚えず、実際の鍵盤でも中央のドから左へ移動しながら音名を言うと対応しやすくなります。
ヘ音記号の加線は中央のドと低いドを目印にする

ヘ音記号は主に左手の低い音域を表します。ト音記号より苦手と感じる人も多く、加線まで増えると混乱しやすいところです。そこで、五線の上側は中央のド、下側は低いドを目印にすると整理しやすくなります。
ヘ音記号の上側は中央のドから読める
ヘ音記号の一番上の線、第5線はラです。その上の間がシ、上第1線が中央のドになります。さらに上へ進むと、間がレ、上第2線がミです。この上第2線のミは、ト音記号の一番下の線のミと同じ高さの音です。
| 位置 | 音名 | 読み方の考え方 |
|---|---|---|
| 第5線 | ラ | 五線内の一番上の線 |
| 上第1間 | シ | ラの1音上 |
| 上第1線 | ド | 中央のド |
| 上第2間 | レ | 中央のドの1音上 |
| 上第2線 | ミ | 加線2本目に乗る音 |
| 上第3間 | ファ | ミの1音上 |
| 上第3線 | ソ | 加線3本目に乗る音 |
ト音記号とヘ音記号を別々の世界として覚えると、暗記量が増えます。大譜表全体をひと続きの音域として見ると、同じ中央のドやミが両方の譜表に現れることがわかり、位置関係を理解しやすくなります。
ヘ音記号の下側は第1線のソから下へ数える
ヘ音記号の一番下の線、第1線はソです。その下の間がファ、下第1線がミになります。さらに下へ行くと、間がレ、下第2線がドです。この低いドも目印として覚えやすい音です。
| 位置 | 音名 | 覚え方 |
|---|---|---|
| 第1線 | ソ | 五線内の一番下の線 |
| 下第1間 | ファ | ソの1音下 |
| 下第1線 | ミ | 加線1本目に乗る音 |
| 下第2間 | レ | ミの1音下 |
| 下第2線 | ド | 低いドの目印 |
| 下第3間 | シ | ドの1音下 |
| 下第3線 | ラ | 加線3本目に乗る音 |
低音域は鍵盤の左側に広がるため、紙面の上下だけでなく「低い音ほど鍵盤の左へ行く」という感覚も一緒に確認すると、音符と鍵盤の位置がつながりやすくなります。
加線の音符がなかなか読めない主な原因

読み方のルールがわかっても、すぐには読めるようにならないことがあります。それは理解力の問題というより、練習の仕方やこれまで触れてきた楽譜の範囲が関係している場合が多いです。原因を分けて考えると、必要な練習も見えやすくなります。
五線の中の音ばかり練習してきた
初級の教材では、五線の中や中央付近の音から学び始めることが一般的です。そのため、長くピアノを習っていても、曲の選び方によっては加線の多い音を読む機会がそれほど多くないことがあります。
曲が少し難しくなり、急に音域が広がると「今まで弾けていたのに読めない」と感じます。しかし、単に見慣れていないだけなら、加線だけを取り出して短時間練習すると改善しやすいです。ピアノ歴の長さと加線を読む速さが必ずしも同じとは限りません。
毎回いちばん遠い音から数えている
音符を読むたびに五線の端からドレミを長く数える方法でも正解にはたどり着けます。ただし、加線が2本、3本と増えるほど時間がかかり、途中で数え間違えやすくなります。
そこで、中央のド、高いド、低いドなどの目印を増やします。最寄りの目印から1〜2音だけ数えればよい状態にすると、判断までの手順が短くなります。よく使う目印が増えるほど、初見の楽譜でも止まりにくくなります。
音名を書き込みすぎて「読む練習」になっていない
読めない音符の下に「ド」「ラ」などと書くと、その曲はすぐ弾きやすくなります。ただし、書き込みを見るだけになれば、音符そのものを読む回数が減ります。同じ曲を何度弾いても、別の楽譜に変わるとまた読めないという状態になりやすいです。
書き込みをする場合は、最初だけヒントとして使い、数回弾いたら消す、あるいは次の曲では書かないなど段階をつける方法があります。自力で読む場面を残しておくことが大切です。
音符は言えるのに鍵盤の場所で迷っている
「これは高いラ」と答えられても、どのラを弾くのか分からなければ演奏は止まります。ピアノには同じ名前の音が何か所もあるため、音名だけ覚えてもオクターブの位置まで一致していないと実用的な読譜にはなりません。
加線を練習するときは、声で音名を答えるだけでなく、対応する鍵盤を実際に押す練習を混ぜましょう。目で見た楽譜、口で言う音名、手で触る鍵盤の3つが結び付くと、曲の中で使える読み方になっていきます。
加線を読めるようにする練習法

加線の譜読みは、一度に長時間取り組むより、少ない音を短時間で何度も見る方が続けやすいです。曲の練習と切り離し、「読むだけの練習」を数分入れると、自分が本当に音符を読めているか確認できます。
1日3〜5分、音符カードやランダム問題を使う
同じ曲を繰り返すと、音符を読まずに指の動きや曲の流れを覚えて弾けるようになることがあります。それ自体は演奏上悪いことではありませんが、譜読み力を確認するにはランダムに出てくる音符の方が向いています。
音符カード、ワーク、譜読みアプリなどを使い、加線1本まで、次に2本までというように範囲を限定します。答える順番は「音名を言う→鍵盤を弾く」にすると、音符と鍵盤の対応も同時に練習できます。
10問程度でも構いません。毎回正解する音を延々と続けるのではなく、間違えた音だけ最後にもう一度出すと、苦手な位置へ練習を集中できます。
最初は3〜5音に絞って即答を目指す
加線の全範囲を一度に出題すると、毎回数える距離が長くなり、疲れやすくなります。最初は「中央のド・その下のシ・ラ」「中央のド・その上のレ・ミ」など、近い3音から始める方法が取り組みやすいです。
3音がすぐ読めるようになったら、隣の音を1〜2個追加します。この方法なら、既に覚えた音を基準として新しい音を判断できます。範囲を少しずつ広げるため、どこで混乱し始めたかも見つけやすくなります。
線の音と間の音を分ける練習も有効
加線では、音符が線に乗っているのか、線と線の間にあるのかを見分ける必要があります。ここが曖昧なら、線上の音だけを集めた問題と、間の音だけを集めた問題に分けると整理しやすくなります。
線上の音は1つ飛ばしの並びになるため、ト音記号の上側なら「ラ・ド・ミ」のように覚えられます。ヘ音記号の上側なら「ド・ミ・ソ」です。丸暗記に頼りすぎる必要はありませんが、頻出する並びをまとまりで知っていると読む速度を上げやすくなります。
慣れてきたら線と間を混ぜます。最終的には、どちらの問題でも「何本目か」を数えなくても、音符の形を見て答えられる状態を目指します。
曲では「最初の音」と「大きく跳ぶ音」を先に確認する
実際の曲では、すべての加線音を1音ずつ立ち止まって読む必要はありません。メロディーが順番に上がったり下がったりしている部分なら、最初の音を確認したあと、音程の動きから追える場合があります。
特に確認したいのは、フレーズの最初の音と、途中で大きく跳ぶ音です。ここを先に読んで鍵盤位置を確認すると、練習中の停止回数を減らせます。加線が多い和音では、一番上と一番下の音を先に確認し、その間の音を見ていく方法も使えます。
子どもが加線の音符を読めないときの教え方

子どもの場合は、「覚えなさい」と音名を増やしすぎると、加線そのものを嫌がることがあります。大切なのは、読めない音を責めることではなく、どこまでなら自力で読めるかを見つけ、そこから少しだけ範囲を広げることです。
親がすぐ答えを言わず、基準音を尋ねる
子どもが止まったときに、すぐ「それはラだよ」と教えると、その場では進みます。しかし、自分で位置関係を考える機会は減ります。「中央のドはどこ?」「そこから何個上かな?」と基準音へ戻す質問の方が、読み方の手順を身につけやすくなります。
答えに時間がかかっても、最初は問題ありません。毎回同じ考え方でたどれることが重要です。正解したら「加線2本目を覚えたね」だけで終わらず、「中央のドから数えられたね」と方法の方も確認すると再現しやすくなります。
ゲームのように短く終える
家庭での譜読み練習は、10分、20分と長く続ける必要はありません。「今日は5問」「1分で何問正しく読めるか」など短く区切る方が、ピアノ練習全体の負担を増やしにくいです。
ただし、速さだけを競うと、線を飛ばして当てずっぽうで答えることがあります。最初は正答数を優先し、正確に読めるようになってから時間を測る方がよいでしょう。昨日より1問増えた、迷う音が減ったという小さな変化を見つけやすくなります。
読めない状態が続くなら先生に練習範囲を絞ってもらう
加線だけでなく、五線の中の音やヘ音記号全体でも頻繁に止まる場合は、家庭だけで範囲を広げ続けるより、先生にどこから練習するか相談する方が効率的です。曲の進度に対して読譜の範囲が広すぎることもあります。
レッスンでは「加線が読めません」だけでなく、「ト音記号の上第2線から迷う」「ヘ音記号の下側だけ遅い」など具体的に伝えると、練習箇所を決めやすくなります。使っている教材の中から、必要な音だけを抜き出してもらう方法もあります。
加線が多すぎる楽譜では8va・8vbも確認する

音が非常に高い、または低いと、加線を何本も使うことになり、楽譜が読みにくくなります。そのため、実際の楽譜ではオクターブ記号を使って、加線を減らして書く場合があります。
8vaは1オクターブ高く弾く指示
「8va」と書かれた部分では、基本的に記譜されている音より1オクターブ高く演奏します。加線が何本も並ぶ代わりに、五線の近くへ音符を書けるため、譜面が見やすくなります。
加線の読み方を覚えていても、8vaを見落とすと実際に弾く鍵盤が1オクターブずれます。高音域で「読めているはずなのに先生と鍵盤位置が違う」というときは、音符だけでなくオクターブ記号が付いていないかも確認しましょう。
8vbなど低いオクターブを示す表記もある
低音側では、書かれた音より1オクターブ低く弾くことを示す表記が使われる場合があります。楽譜によって表し方が異なることもあるため、記号と点線がどこまで続いているかを確認することが大切です。
加線を読む力と、オクターブ記号を理解する力は別です。加線の本数が少ないから簡単とは限らず、記号によって実際の鍵盤位置が変わることがあります。音域が急に高くなったり低くなったりする曲では特に注意しましょう。
加線の音符が読めない悩みは、基準音と短時間練習で減らせる
加線は五線とは別の仕組みではなく、五線を上下に延長したものです。まず中央のドを確実に覚え、ト音記号なら上第2線のド、ヘ音記号なら下第2線のドなど、よく使う目印を少しずつ増やすと読みやすくなります。
最初は基準音から1音ずつ数えて構いません。ただし、いつまでも遠い場所から数えるのではなく、よく出る音を見た瞬間に答えられるようにしていくことがポイントです。音符カードやランダム問題を1日数分取り入れ、音名を言ったあと実際の鍵盤を弾くと、曲の中で使える読譜につながります。
加線だけが苦手なら、譜読み全体ができていないとは限りません。読めない範囲を3〜5音程度に絞り、正確に読める範囲を少しずつ広げていけば十分です。子どもの場合も、すぐ答えを教えるより「どの基準音から数えればいいか」を一緒に確認すると、自力で読める場面を増やしやすくなります。


